今夜明日、台風がくるらしいですよ、とスーパーのお兄さんも言ってた。

「だから、今夜はお家でゆっくりしたらいいですよ」
買い物袋に夕飯の食材をつめる私に、スーパーのお兄さんは買い物かごを補充しながら言うのだった。外の風とは対照的に細めて笑う目はやさしい。


家に帰ってきて調べると本当だった。《北海道には停滞前線があって、南から暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となるでしょう。5日15時の石狩・空知・後志地方の天気は、概ね雨で激しく降っている所があります。5日夜は、雨で、雷を伴い非常に激しく降る所があるでしょう。6日は、雨で、雷を伴い非常に激しく降る所がある見込みです。》


天気図で見る台風の正体は美しい。白い渦はエネルギーのかたまりだと思う。けれども地上では雨が強く降るから、みんな早く帰っていくね。美しさを危険や悲しみに変えないように、備えることで台風をうまく迎えるんだ。


お家に帰ったら、人びとは温かいごはんを食べたり、誰かと電話したりする。音楽の中には風の音が混ざるから、結局音楽を止めてカーテンの外をみたりする。また誰かはそれをBGMに本を読んでる。台風が近づくからこどもたちはワクワクするのに早く寝なさいと言われてしまうから仕方なくふとんに入る。雨の音の変化を聴きいているうちに夢へ切り替わるだろう。この街にいると、人びとが今夜そんなふうに、台風を迎えるんじゃないかなと思い浮かぶ。


今夜はさっき買ったブロッコリーのパスタだよ。いま麺がゆであがるのを待っている。いまは部屋で『色色衣』をちいさな音でかけながらこの文章をうっていますいます。こまちゃんは今頃、もうお家に着いたかな。りゅうきは傘を彼女にあげたかな。遠くのあの人はどうしているかな。


もうすぐ麺がゆであがりそう。