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うつくしい声の人に出会った。その声は、すこし高くて透きって春の風のように吹き抜ける。笑うとその声は海中でふわふわと浮かんでゆく光を受けた泡のようだった。ぷくりぷわぷわきらきらしていて、そんな笑い方をぼくは初めて聞いた。


その人は男性だった。歳は40前後であったがまるで少年だった。その人が笑うので、何を笑っているのですか?と聞くと「君の魂が明るくなろうとしているから」といってさも愛おしげに微笑むのだった。


ぼくはこの人と居ればもっと成長できるだろうと思い(いや、単純に話していて居心地がよかったからかもしれない)、これからも沢山お話ししたいと考えていた。するとその人はいった。「これからもいっぱいお話したいね。時間を一緒に過ごしたいね。」ぼくが押し黙ってしまうと、いたずらっぽい表情をしたあと、また笑い出していた。不思議な人だった。