今夜明日、台風がくるらしいですよ、とスーパーのお兄さんも言ってた。

「だから、今夜はお家でゆっくりしたらいいですよ」
買い物袋に夕飯の食材をつめる私に、スーパーのお兄さんは買い物かごを補充しながら言うのだった。外の風とは対照的に細めて笑う目はやさしい。


家に帰ってきて調べると本当だった。《北海道には停滞前線があって、南から暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となるでしょう。5日15時の石狩・空知・後志地方の天気は、概ね雨で激しく降っている所があります。5日夜は、雨で、雷を伴い非常に激しく降る所があるでしょう。6日は、雨で、雷を伴い非常に激しく降る所がある見込みです。》


天気図で見る台風の正体は美しい。白い渦はエネルギーのかたまりだと思う。けれども地上では雨が強く降るから、みんな早く帰っていくね。美しさを危険や悲しみに変えないように、備えることで台風をうまく迎えるんだ。


お家に帰ったら、人びとは温かいごはんを食べたり、誰かと電話したりする。音楽の中には風の音が混ざるから、結局音楽を止めてカーテンの外をみたりする。また誰かはそれをBGMに本を読んでる。台風が近づくからこどもたちはワクワクするのに早く寝なさいと言われてしまうから仕方なくふとんに入る。雨の音の変化を聴きいているうちに夢へ切り替わるだろう。この街にいると、人びとが今夜そんなふうに、台風を迎えるんじゃないかなと思い浮かぶ。


今夜はさっき買ったブロッコリーのパスタだよ。いま麺がゆであがるのを待っている。いまは部屋で『色色衣』をちいさな音でかけながらこの文章をうっていますいます。こまちゃんは今頃、もうお家に着いたかな。りゅうきは傘を彼女にあげたかな。遠くのあの人はどうしているかな。


もうすぐ麺がゆであがりそう。

37

話を聞いてたらあの子は泣いてしまった。
押し込んでた悲しさで泣いてしまったみたい。
マツカラの塗られていない黒い細い
睫毛の先からこぼれる涙を
真珠に変えてあげたら
あの子は自分で気がついて泣き止んだ。
全てが成長の糧になり悲しいことは何もないんだと。
笑ったあの子はいっそう美しく見えたよ。

36

秋の初めの夜だった。
ぼくたちは散歩していた。
虫が静かに鳴いて風が心地よい。
あ!流れ星!!!!を!!!!
ぼくは流れ星をキャッチした!
はじめてだったので驚いた。
おちてきてしまったらしい。
流れ星は小さくて、冷たくて、炭火の残りのようにゆらゆら光っている。
かわいい。ぼくの手のひらからきみの手のひらに乗せた。
きみは流れ星があまりに綺麗だったのでを空にかえしたいと言った。
もちろんぼくも賛成だった。
「流れ星、ありがとう、宇宙へお帰りね!」
そう言ってきみはめいいっぱ高く星を宇宙になげたよ。
星の光が遠く見えなくなって、静かになった。
すると、キラキラと流れ星のこえがきこえた。
「ありがとう、仲間たちも喜んでる!」
空は、流れ星でいっぱいになった。
ぼくたちはびっくりした!
それから流れ星が宇宙に帰れたとわかって喜んだ。
それにしてもすごい数!!
それになんてきれいなんだろう。


その夜は多くの人たちが流れ星を見ることが出来たよ。
みんな、どう思ったかな〜?
(もちろん流れ星とぼくたちのことはまだ誰も知らないのさ!)