作り話

リバイバル上映を見に来るのは映画好きの人たちが多い。この時代、古い映画が流行るなんてことは、そうない。にも関わらず、良い映画は繰り返して上映される機会を得る。見にきてくださる人がいるのは本当にありがたいことです。そんな人たちは、ある意味で、映画の世界にとりつかれているのだけれど。


古い映画が流行らないのも仕方がないことです。忙しい社会では、わかりやすい・時間を食わない、が好まれる傾向があるから。そして、娯楽が多様化した今日、簡単に刺激をえる方法なんてゴマンとある。


なのに、爆発も殺人もカラーもない映画を楽しむ人たちは、「変な人」とも言えるかもしれない。彼らは自分の中で世界を組み立てることが好きな人種だ。そして、ロマンチストが多いのも特徴。


この小さなお昼の映画館で6割も席が埋まるなんていうのは上々です。映画が始まって、場内が暗くなる、この瞬間がいちばんワクワクする。何度も繰り返されてきた映写機の回転とお客さんの表情の移り変わり。その上映の一回一回が映画とお客さんとの一期一会みたい。同じ場所で同じ映像を見ながら、それぞれが自分の世界に入っている。


映画の中盤に差し掛かると、私は電話をすることになっている。すると暗い映画館の客席側で小さな光が静電気のように弾けた。それは観客の心臓に落ちた雷だった。打たれた人は映画が終わったあともずっと私の電話のことが頭から離れなくて、考えつづけるでしょう。こんなふうに、数えられないほどの人たちが私たちのすむ側の世界に、恋をして帰っていくのです。


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aiueobakeさんは、
「昼の映画館」で登場人物が「電話する」、「雷」
という単語を使ったお話を考えて下さい。
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