トマトジャムの瓶のふたがあかないのです。
何度空けようとしても、あたためてもふたがあかないのです。開封されない瓶の中のジャムは、ガラスの外から観察されるだけです。あかい。クレヨンで書いたトマトや、冷蔵庫で隣に並ぶイチゴジャムのようにハッキリとして主張するよなあかさとは違います。夜にもれる家庭の灯りのようなあかさです。瓶を振ると揺れる、とろり。
ふたを開けることが出来ないので、舌の上にはのりません。ジャムが味わわれる為に作られたのなら、飽かない瓶の中に入ってるジャムの意味は・・・?
それはまるで、宇宙空間で奏でられる美しい音楽のようでした。